マカンのグレードは現行モデルで4種類。
価格が安い順に、ベースグレード(「素のマカン」とも呼ばれる)、S、GTS、ターボとある。
ベースグレード | S | GTS | ターボ | |
価格 | 7,370,000円 | 9,010,000円 | 10,620,000円 | 12,520,000円 |
馬力 | 245ps | 354ps | 380ps | 440ps |
0-100km/h加速 | 6.7秒 | 5.3秒 | 4.9秒 | 4.5秒 |
最高速度 | 225km/h | 254km/h | 261km/h | 270km/h |
(2020年8月現在の公式情報に基づく)
こうみると、「性能が上がるから価格も上がるだけでしょ?」と思われるかもしれない。
しかし、ポルシェではグレードの違いはそうではない。
ポルシェのグレードにはそれぞれにストーリーがある。
本記事ではいわゆる「上位グレード」であるGTSとターボのグレードを比較してみる。
ターボよりGTSの方が開発に時間がかかる?
ポルシェはグレードによって発売日が異なる。
マカンの場合、以下のような変遷を遂げてきた。
前期型 | ベースグレード、S、ターボ | 2014年4月 |
GTS | 2015年11月 | |
ターボパフォーマンス | 2016年9月 | |
後期型 | ベースグレード | 2018年11月 |
S | 2019年1月 | |
ターボ | 2019年10月 | |
GTS | 2020年1月 |
下のグレードから順番に出してくるわけではない。
ターボとGTSだけ比較すれば、ターボの方が先に発売される。
それはGTSというモデルの特殊さが背景にあるのだろう。
ターボの後に、GTS
ターボまでの高性能モデルを開発してもなお、ポルシェの「走り」への追及は終わっていない。
性能値だけに捉われるのではなく、「ポルシェらしい走り」に特化したモデルがGTSだ。
GTSはターボより後に発表される。
ポルシェが求めるスポーティーな「走り」を実現するには、「高性能値」を実現することよりももっと研究開発に時間がかかるのかもしれない。
そういう意味ではGTSは「最も極まったグレード」なのだろう。
もちろん、実は開発はほぼできているけどポルシェのマーケティング戦略的に発売順に差をつけている可能性もなくはない。でも、それも含めて、ポルシェが各グレードに込めるメッセージなんだと思う。
ターボとGTSはどちらが上か?という問題は、単純に馬力などの数字だけでは判断できないのだ。
客層の違いはクルマへの趣向の違い
ターボとGTSはどんな客層の方が購入しているのか、ポルシェセンターの営業担当Y氏に聞いてみた。
ターボ購入者もGTS購入者も共通しているのは「クルマが好き」ということだ。
これはターボやGTSといったグレードに限った話ではないだろう。ポルシェを買う人はほとんどの人がクルマが好きな人なはずだ。
その中で、特にターボ購入者には以下のような特徴があるらしい。
この特徴は全ての人にあてはまるものではなく、だいたいのイメージ・所感として捉えてほしい。
- とにかく余裕を持った走りをしたい人
- 最上位グレードというポジションに強く惹かれる人
- 他社からの乗り替えも結構いる(ベンツS63AMGとか)
- 意外と普段使い(街乗り+高速程度)の用途の人が多い
- 年配の方が多め
普段使いの人が多いというのはちょっと意外だった。
馬力があって余裕を持った走りをしたい人がターボを購入しており、やはり経済的にも余裕がある年配層の方が多いらしい。
- 「走り」にこだわりがある人
- スポーティーな走りが好きな人
- 他社からの乗り替えよりもすでにポルシェオーナーの人が多い
- 峠道のワインディングに走りに行ったりする人もいる
- 年齢層は幅広い
一方のGTSを買う人は、とにかく「スポーティーな走り」をしたい人。
GTSはマカンの中でも特に「走り」に特化したグレードとされており、そういった「走り」へのこだわりが強い人が購入しているとのことだった。
こちらも経済的に余裕のある年配の方が多いのかと思いきや、意外にも年齢層は幅広く、若い方にも人気らしい。
ポルシェが語るグレード別ストーリー
うちにあるマカンのカタログ(前期型だけど)にはグレード別の紹介ページがある。
グレードごとにキャッチコピーがつけられており、各グレードに込められた想いが語られていたのが印象的だったので紹介してみる。
ターボは「歓び」「パフォーマンス」
“パワー、パフォーマンス、そして走りの歓び。全てが他を凌駕します。
(中略)
マカン、ターボ。既成概念をはるかに超えたパフォーマンスが、かつてない刺激に満ちた人生へ強烈に駆り立てます。”
ターボに乗って感じられるのは、最高の「歓び」「パフォーマンス」。
ターボは最上位グレードとあって、性能値の全てで他グレードを上回っている。
最高のパフォーマンスが感じさせてくれるワクワク感、躍動感、嬉しさ、優越感、達成感、そういったいろいろな感情が「歓び」という言葉で表現されている。
GTSは「興奮」「スポーツ性」
“興奮を愉しみ尽くす。
(中略)
妥協のないスポーツ性をわずか3文字で表現するなら、ポルシェの答えは常にGTSです。”
一方のGTSは「興奮」。
よりアグレッシブでエキサイティングなクルマなんだという印象を与えてくれる。
ポルシェが「スポーツ性」を極めるとGTSになる。
GTSはターボとは全く違うベクトルを向いていて、「スポーツ性」という方向に振り切って開発されたんだろう、ということが伝わってくる。
グレードごとに違う「良さ」がある
ポルシェのモデルの上位下位は、優劣ではない。
グレードごとにポルシェらしさが存分に注ぎ込まれていて、それぞれのグレードにはストーリーがある。
だからこそ、価格だけでは選べないポルシェのクルマ選びの楽しさがあるんだと思う。
次回の記事はベースグレードとSについてまとめる。ベースとSって「下のグレード」って思われがちだけど、「下」という表現で済ませてはいけないポルシェの情熱が感じられたので、また熱く語りたいと思っている。